ジルウェート 第一章 Act.2
アウス 「「 突然の知らせ、まずお詫び申す。 この度、或所にて「神の選定」が行われた。 我々の選定により、あることが決定した。 「スュード‐サリーポの町‐2丁目‐7 ウィン。 貴方を、第二十一期 「ジルウェート」に任命する」 神炎皇 ウリエル」……」 書庫。 アウス宅。 先ほど名前が明らかになったサリーポの町。 海。 空。 全てに響き渡りそうな勢いで、それは轟いた。 アウス 「えええええええぇぇぇえぇぇええぇぇえええぇぇ!!!!!!!!!!??」 ウィン 「えええええええぇぇぇえぇぇええぇぇえええぇぇ!!!!!!!!!!??」 Act.2 地下の書庫に、大きく響き渡った悲鳴。 その喧しい共鳴が終わる前に次の言葉が部屋中に伝わった。 ウィン 「 なっ なんて簡潔な文章なんだろうね・・・」 アウス 「そこぉ!!?」 ウィン 「だって、そこに驚いたんじゃないの?」 アウス 「違うよ!」 ウィン 「??」 アウス 「 …なんってくだらないイタズラなの!?」 ウィン 「えー?」 アウス 「ウィンがジルウェートになんてなったら、世界は終わりだよね〜!」 ウィン 「それだと僕が恐怖の大魔王みたいだよ」 アウス 「そんなのよりずっと怖いよ、ウィンは」 ウィン 「そうかなぁ〜…」 アウス 「喜ぶなっ」 ウィン 「その手紙、イタズラだったの?」 アウス 「イタズラじゃないわけないでしょ。 本当に悪質」 ウィン 「へぇ〜」 アウス 「ウィン、なんとも思わないの?この手紙のせいで死にかけたのよ?」 ウィン 「あ、そうだったねぇ…。 でも、いいんじゃないの。 こうやってアウスのチャーハンが食べられるわけだしね!」 アウス 「あぁ、そう…。 ならいいんだけど…」 思わぬタイミングで褒められたアウスは、少し照れた様子でウィンに背中を向けた。 アウス 「 いやいや〜、なんだ、イタズラかぁ…。そうかぁ」 ウィン 「ジルウェートなんて、 ねぇ〜」 アウス 「うんうん・・・。 全く、だれが・・・・・・」 ・・・・・・・・・ アウス 「・・・だれが・・・。 フォールの古い文字で・・・? なんで・・・?」 ウィン 「気晴らしでしょ?」 アウス 「読み方のわからない手紙を見て、驚く人いないよ。 普通は、呆れてすぐ捨てる。そんな反応見ても楽しくないし」 ウィン 「呆れフェチとか?」 アウス 「そんな人いないでしょ…。 意味もなく手紙なんて送らないし、フォールの古文法を知ってる人も極少数…」 ウィン 「アウスだっ!!!」 アウス 「おバカ。 そんなくだらないことしないよ」 ウィン 「ねぇ、結局どういうことなの? 僕、おいてけぼりだよ…」 アウス 「へ? あ、ごめんごめん」 すでにチャーハンの大半を食べつくしたウィンは、ここにきてもったいなさを感じたらしく、レンゲに少しだけ米を乗っけて食べ始めた。 アウス 「ただのイタズラだとは思えないってこと」 ウィン 「そりゃ、手紙にも送料ってものが…」 アウス 「その「タダ」じゃないよ。 何か裏がありそうなのよ」 ウィン 「ウラ??」 ウィンは、頬にご飯粒をつけた状態で、例の手紙の反対側を覗きこんだ。 ウィン 「何も書いてないよ?」 アウス 「あのね、そういう意味じゃ・・・」 その時、アウス達の上部から叫び声がした。 ??? 「キャアアアアァァアッ!!!!」 遠くからのようで、聞こえづらい声だったが、二人の会話を止めるには十分だった。 アウス 「なく…っ!!?」 ウィン 「…だれか叫んでるね」 アウス 「なにかあったのかな…?」 ??? 「 なんだコイツ…うああ!!」 パリイィンっ!! ガラスのようなものが割れる音、周辺の喧噪が鳴りやまない。 ウィン 「様子見てくるっ!!」 アウス 「え? ちょっと…!」 ― サリーポ ― ウィンは、アウスの家を飛び出した。 そこには、騒がしい人だかりができていて、何かが折れて壊れる音などが響くたびに人々は叫びをあげた。 そこから全速力で逃げる者、興味本位で近づくもの、とにかくその場にはいつもの町の風景はなく、騒然とした雰囲気が流れていた。 ウィンは、その人だかりに向かって走り出した。 ウィン 「な、なんだありゃ…」 ウィンの今まで見たことのないモノが、看板や他人の家の柱、窓をたたき壊していた。 それは、起立した猫ほどの大きさの、一本足で自立する目玉だった。 その足は怪鳥のように力強く、足のばねで人の身長より高く跳びあがった。 大きな目玉は、目標物を見つけるとギョロリと睨んで威嚇する。 周りの住民は、化け物に恐れながらも珍しさから遠巻きにそれを眺めていた。 ウィン 「あんなめんたま、始めてみた…」 アウス 「「デス・フット」」 ウィンの横にはいつの間にか、「デス・フット」と呼ばれた化け物を眺めるアウスがいた。 アウスは袋に包まれた大荷物を二つ、右手で抱えていたが、今のウィンはそんなものは見てられない。 ウィン 「アウス」 アウス 「この子自体を見て驚いてちゃダメよ。フォールの生き物はみんなこんな感じ」 ウィン 「みんな目だけ!?」 アウス 「人間の形とは違うって意味よ。 とにかくこのままじゃ、あの家…」 デス・フットに先ほどから攻撃されている家は、すでに見るも無残な形状。 しかも、家の手前では 「やめてくれっ!! やめろォオ!!」 と、半泣き状態で懇願する、家主と思しき人がいる。 ウィン 「でも、どうしよう?」 アウス 「さっさと止めるよ」 ウィン 「止めるって言っても…」 アウス 「そうよね。 ウィンも急いで出ていっちゃうから…これ、忘れてったよ」 アウスは腕に抱えていた荷物の片方をウィンに渡した。 ウィン 「・・・・・・??」 アウス 「皆さん、下がってください! 危険ですからっ」 周辺の人間に呼びかけるアウス。 「アウスが言うなら…」 といった感じで退いてゆく人々。 渡された荷物の袋を開けるウィン。 そこには、一本、綺麗な杖があった。 杖の先端には、龍をかたどった像が風色に光る宝石を守るように飛んでいた。 ウィン 「 …フウハク」 一方、アウスの号令で、周りの住人はだいぶ遠くの方まで行ったが、 どうあっても引けない者もいた。 おじさん「オイ! アウス! アレ、俺の家なんだっ!! どうにかしてくれ!」 アウス 「どうにかしますよ。大丈夫だからっ」 デス・フットは、周辺の雰囲気が変わったことに気づき、キョロキョロし始めた。 ウィン 「懐かしいねぇ〜。久しぶりだねぇ〜…」 デス・フットの巨大な目玉がとらえたのは、 ウィン。 大きな目は、ぴょんぴょんと方向転換をすると、ウィンを睨みつけた。 アウス 「ウィンっ!! くるよ!」 ウィン 「ん?」 デス・フットは大きく足に力を込めたと思うと、高速でウィンに向かって飛び込んできた。 ウィン 「あ…」 アウス 「Fendre(ファンドル)!!!」 ウィン 「んっ!!」 ウィンの目の前に、何かが突如出現した。 岩だ。 デス・フットはその岩に頭(眼)をぶつけ、バウンドして地面に転んだ。 ウィン 「おっどろいたぁ〜…」 アウス 「ちょっと、ウィン…。もうちょっと緊張感持ちなさいよ」 ウィン 「10年ぶりの再会なんだよ? しかたないじゃん」 アウス 「はぁ…」 アウスの手には、袋からはがされたウィンとは別の杖が掲げられていた。 頑丈なヒノキの棒の先端で輝く何らかの宝石は、緑の布でしっかりと固定されている。 おじさん「・・・・・・」 アウス 「おじさん、少し離れてた方がいいよ」 おじさん「はっ、離れるわけにはいかないよ。 だけど…、アウス、さっきのは」 アウス 「霊術」 おじさん「え?」 アウス 「魔法だよ。簡単に言うと」 気づくといつの間にか、アウスの召喚したと思われるウィンほどの大きさのある大岩は消えていた。 アウスがデス・フットに目をやると、かなり怒っていることがわかる。 知力が低いために言葉も通じなさそうで、こうなったら止まらない。 おじさん「なぁ、アイツ、フォールだろ? アウス、やっつけてくれよ!」 アウス 「やっつけるなんてできない。 彼も生きてるわ」 おじさん「そ、そんなこと言ってもフォールだぞ?」 アウス 「関係ないでしょっ。 埒が明かないから、どうにかして逃がすしかないよ」 ウィン 「くるよ〜」 ウィンの言葉で相手を見るアウス。 デス・フットは、力の限り足を踏ん張り、思いっきりアウスの方に突っ込んできそうな様子。 アウス 「ウィン。 次よろしくっ」 ウィン 「はいよ〜っ」 デス・フットが跳び込んできた。 ウィン 「Ongle(オングル)っ!!!」 ウィンがそう唱えて杖を振ると、デス・フットは跳んだ方向とは全く逆の、町の出口の方へ吹き飛んだ。 強風が起こったのだ。 体の小さいデス・フットは、かなり遠くで地面にたたきつけられた。 アウス 「ありゃ、 ウィン…。 飛ばしすぎ…」 ウィン 「・・・・・・だね・・・」 アウス 「ちょっと、あの子の様子見てくる」 ウィン 「僕も行くっ」 おじさん「な… なんだあの子たちは」 二人が、倒れたデス・フットのもとへ駆け寄る。 大きな目の焦点は合っていないようで、気絶していることが見て取れた。 アウス 「・・・気絶してるみたいね。 怪我もないみたい」 ウィン 「うん…。 悪いことしちゃった」 アウス 「あんなに家を壊したんだから、このくらい罰として…ね?」 ウィン 「起きてまたこっちに来たらどうしよう??」 アウス 「来ないわよ。 あんなに怖い思いしたら」 ウィン 「かな?」 アウス 「うん」 二人は、デス・フットをそのままにして去ろうとした。 ??? 「 ……ジルウェート…」 重く、低い声が二人の背後に響く。 アウス 「!?」 ウィン 「?」 ウィンとアウスが振り返ると、気絶したはずのデス・フットの目玉が、こちらを見ていた。 ??? 「ただの ガキ、と踏ん でいたが… 多少は戦える者のようだ…」 アウス 「・・・? 喋れるの?」 ウィン 「口どこ??」 ??? 「 とに かく… この体では 限界 があ る 出 直 すと しよ う」 アウス 「ねぇ、なんなの?」 ウィン 「ねぇ!! 口どこなの??」 ??? 「…………」 アウス 「…………」 ウィン 「…………」 デス・フットの目玉は、また焦点を失った。 ウィン 「・・・変な奴だったね」 アウス 「・・・・・・・・・・・・・・・」 ウィン 「アウス?」 アウス 「・・・ジルウェートって、アイツ言ってたよね」 ウィン 「言ってた?」 アウス 「 ウィン。 もう一度、あの手紙について検討してみる必要がありそうよ」 つづく