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しゃこばな☆しゃあまん   第10話 恐怖! ヴェダ・オブ・ナイトメア


エリアが風邪をひいた。 そのとき、霊使い達の家からずっと離れた場所で新たな物語がはじまっていた。 ここは、ヴェダの家。 無駄に暗く、無駄に広い森林の中。 周りには、他の家はおろか人の気配さえ感じない。 むしろ、怪物やお化けが今、飛び出してきてもおかしくないほどの妖気を感じる。 それは、ヴェダの家の周りに限ったことではなく、ヴェダの家自体もかなりの妖気だ。 各所に枯れかけた蔓が巻きつき、塗装がはがれてレンガが見えている場所もある。 さっき気づいたのだが、2階の窓のガラスに関しては割れている。 例えば、そこから真っ白な服を着た女性がこちらを睨んでいようとも、ハマりすぎて逆に驚けそうにない。 さらに、壮観なのはその家の広さ。 すでに「家」と呼ぶのは失礼に当たりそうだ。 この家がもし新築であれば「大豪邸」と呼んで、家主の方と仲良くさせていただきたいものだが…。 現在の苔むしたこの家を、一言で表現しろ と言われたら、ほとんどの人が声を揃えてこう言うだろう。 メルト 「 …オバケ屋敷…」 アウス 「め、メルト…! そういうこと言わないの!!」  ヴェダの家の片づけをするために、アウスとメルトが彼女の豪邸にやってきた。 今ちょうど、ヴェダの豪邸の外観をすべて把握できる、玄関前に来たところだ。 メルト 「だ、だって、これ絶対いますよ…」 アウス 「いないいない! ヴェダに失礼でしょ…」 ヴェダ 「私に失礼、ではない。」 アウス 「あ、聞こえてた…? ごめん…」 ヴェダ 「まだ、自分が死んだことに気づいていない者もいる。 彼らには面と向かって「オバケ」とは言わない方がいい。失礼だ。」 ヴェダは、まるで「ご老人には席を譲ろう」と注意するが如くサラリと訳の分からないことを言ってのけた。 その後、アウスとメルトの沈黙にも気付かない様子でスタスタと玄関へ歩を進めた。 アウス 「…………」 メルト 「…………」 アウス 「自分が死んだことに気づいていない者…?」 メルト 「…………」 アウス 「……ね、それってどういうこと?」 メルト 「…死んだ者がいるってことですよね…?」 アウス 「!!」 メルトの一言にアウスは怯えたようで、ヴェダの豪邸にある窓全てに大げさに注意を払った。 さすがのアウスも、オバケの存在を家主本人からチラつかされてはたまったものではないらしい。 メルト 「だ、大丈夫ですよ。 いつものヴェダさんの冗談ですよ…」 アウス 「め、メルト…。何故君はこんな時だけ前向きなの…」 メルト 「召喚士ですから…。オバケなんかにビビってたんじゃ商売あがったりです…!」 いつ召喚士が商いとして成立したのか。 そして、そんなこと言いながらも完全にメルトの目は泳いでいる。 アウス 「そうなんだぁ…。 いいなぁ、私も召喚士なら少しくらいオバケに耐性あったんだろうけどなぁ…。」  アウスはオバケが苦手なようで、完全に気が動転している。 メルトが召喚士なら、自分は何なのか というところまで思考がいかなかったようだ。 メルト 「と、とりあえず仕事を終わりにしないことには…」 アウス 「そうだね…」 メルト 「本当に危険ならさすがのヴェダだって招待なんてしないでしょうし…」 アウス 「そうだね…」 メルト 「さぁ、ちゃっちゃと片づけちゃいましょう…!」 アウス 「そうだね…」 珍しく、アウスは人の話を聞いていなかった。 しかし、それはもちろん故意ではなく、襲いくる恐怖に打ち勝つのに精一杯だったからだ。 メルト (あぁ、アウスさんがこんなに縮こまって…。 こんな表情することもあるんだなぁ…) なぜメルトがいると話がこういう方向に行くのかはわからないが、少なくともアウスほど怯えていないメルトは、どことなくこう誓った。 メルト (アウスさんを守るのは私だ!!) ヴェダ 「いいから早く入って」 メルト 「うっしゃ!!!!」 ヴェダ 「メルト、元気ね。  …死者は元気な魂が大好物…」 メルト (言っちゃった! この人「死者」って言っちゃったぁ〜! 確定じゃないですか。 オバケ絶対いるじゃないですかぁ〜!!!!) アウス 「  …風邪引いた〜…♪ 風邪引いた〜…♪ ヒ〜タなのにカゼなのよ〜…♪」 メルト 「あぁ! アウスさんが何か唱え始めた〜!!! やばいですよ、ヴェダさん、これ以上は苛めないであげて〜…!!」 ヴェダ 「 …くすくす…」  アウスもメルトも、何とか落ち着いて豪邸のロビーまでやってきた。 内観は、 豪邸の中に一歩踏み入れたとたんに、どこにいたのか、外のカラスがギャーギャーと騒ぎ出したのと、 玄関を開けてすぐ、左右に現れる悪魔だか死神だかをかたどった様な石像があるのと、 大きな蜘蛛の巣が色々な場所にかかっていて、今も獲物がかかるのを待っているのと、 豪勢なシャンデリアの照明の明るさが中途半端で、いかにも といった雰囲気を醸し出しているのと、 入ると同時に勢いよく玄関の扉が閉まったこと以外は、本当に装飾の綺麗な部屋であった。 別の言い方をするならば、「ホーンテッドマンション」である。 そのうち、天井にある首つり死体でも見つけてしまいそうだ。 ヴェダ 「ここまで来るのに、疲れた。 少し休もう。」 アウス 「  …休まらないよね…」 メルト 「 …休まりませんね…」 二人が案内されたのは、これまた広い食堂のような場所。 ヴェダ 「座って」 ヴェダは、そっ と椅子を2つ引いて二人をそこへ座るように促した。 黒や赤の装飾が多い屋敷のなかをロウソクの火が照らす。 妙に真っ白なテーブルクロスが光って見え、それもまた不気味だった。 メルト 「座りましょう…」 アウス 「座ろうか…」 二人は、一度落ち着こうということでヴェダの示した椅子に腰かけた。 ブウゥ―――っ!!! メルト 「うぴ――――――っ!!!!」 アウス 「わ――!!!」 ヴェダ 「くすくす…」 ブーブークッションだ     と気づいてから二人は、自分の心臓の鼓動の異常な早さに危機感を感じた。 目の前で、口元を手で隠して楽しそうに微笑むヴェダ。 メルト 「ヴェ、ヴェダさん…。 この状況でBBCはダメですぅ〜…」 アウス 「し、死んじゃうよ…」 ヴェダ 「 …うぴー …だって… くすくす…」 メルト 「しっ、仕方ないじゃないですかっ! 驚いたんだからぁ!」 メルトは顔を赤くしてちょっとだけヴェダに強く出た。 しかし、そんなに二人の驚く反応がご満悦だったのか、ヴェダは笑うのをやめない。 だが実際、アウスとメルトも少し安心していた。 本物の化け物が出てきて自分たちのことを斧でも鎌でも持って追いかけてきたり、呪われて一生この豪邸から出られない… などというずいぶんリアルな恐怖体験をするものかと思っていたので、驚きはしたが、ブーブークッションなどオバケに比べたら可愛いもの。 ヴェダのこういった可愛い子供だましが続くようなら私たちも付き合ってあげられる。 そう考えたとたん、まわりの風景を多少は客観的に眺められるようになってきた。 窓の向こうには、淀んだ曇り空がある。 次に窓をしっかり見れば、だいぶ埃をかぶった窓枠だ。 ガラスもくすんでいる。 ヴェダ 「お腹空いた。 何か出してもらうから。」 ヴェダが2度、手の平を叩いた。 きっと厨房のシェフを呼ぶ合図だ。 こんな広い豪邸なのだから、シェフくらいいるだろう。 そういえば、我々も少し小腹がすいたような気がする。 たくさん叫んだからなぁ。 アウス 「おかまいなく…」 礼儀としてとりあえずこう言っておくが、頂く気は満々である。 なかなかシェフはやってこなかった。 しかし、ヴェダは平然とどこかよく分からない場所を見つめてじっとしている。 妄想でもしているのだろうか? こちらに様子を見に行け、とでも言いたいのか? 冗談じゃない。  などと言ううちに、どこからか物が焼けるようなにおいがしてきた。 普通の人間なら、食欲がブクブクと湧いて出るようないい香りだ。 きっと、シェフはヴェダが2度手を叩いた時点で料理をはじめていたのだろう。 なんと意思疎通のとれた関係であろうか。 それにしても、沈黙が続く。 この部屋の装飾や作りもそろそろ見飽きてきた頃だ。 すると、奥の方から何者かが歩いてくる音が聞こえた。 ヴェダ 「来た。 アウス、メルト。 食べていい。」 メルト 「あ、はい。 いただきます。」 アウス 「ありがとう。 いただきます。」 シェフは、一つのお皿をヴェダの前に置いた。 そのお皿の上には、何かのお肉のソテー的なものが乗っていた。 全体の量も、現在のお腹の空き具合からいって適量である。 何の肉なのかはここからでは分からない。 続いて、シェフはこちらの方へやってきた。 二人の前に、ヴェダと同じ料理が並んだ。 ソースの焦げる匂いが香ばしくてたまらない。 なかなか腕のいい料理人なのか、 と二人はシェフの去りゆく後姿を見た。 アウス 「…………」 メルト 「」 単刀直入に言う。 そのシェフには、首がなかった。 ヴェダ 「シェフ。 客人へのあいさつは…?」 ヴェダに叱られたシェフは、こちらを振り返って深々とお辞儀をした。 見間違いじゃない。 完全に首がなく、その付け根には固まった血がグロテスクに混ざり合っている。 二人はもう、叫ぶしかなかった。 二人 「うわあああああぁぁぁぁっ!!!!!!!!」 ヴェダ 「 …首がないくらいで驚いてたんじゃだめ…」 生きているはずの人間の首がないということで驚かなかったら、他に何で驚けと。 常識を覆すそんな出来事を目の前にした二人には、UMAもただのアニマルである。 実際、ヴェダの向こうに持っていく荷物というのはほんのわずかで、そんなに数日もかかるようなものではなかった。 しかし、ヴェダの家にいた5日間のうち4日間はヴェダのお友達オバケ達に遊ばされた4日間。 ヒータから「エリアが風邪をひいた」との一報を受けた時は「帰れる!!」と一度は思ったが、なぜか「アウスは来るな」と言われ、帰宅する口実を失った。 今はなんとか、こうして仕事を終え、帰路についている。 現在のアウスとメルトの脳内メーカーは、安心の「安」と爽快の「爽」と平穏の「穏」に溢れている。 しかし、例の怨念のキラードールを胸に抱いたヴェダは、そんな二人を見てまた、不気味にほくそ笑むのだった…。 アウス 「いやぁ、 やっと終わったねぇ〜…」 メルト 「終わりましたね〜…!」 アウス 「長かった…」 メルト 「これでやっとおうちに戻れます…」 ヴェダ 「今回は…、 ごめんね」 アウス 「あぁ、気にしないでよ〜。 終わってみれば、きっとこれは私たちの精神力を鍛えるのに一役買った気がするから」 メルト 「終わりよければすべてよし、ですね」 ヴェダ 「そう… よかった。」 そして、今アウスが座ろうとしている椅子には既にヤツが仕掛けてあった。 このあとの展開を完全に予想しているヴェダは、二人の反応を妄想し、もう口元から笑いが抜けなかった。 おわり♪

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